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2008年09月05日

08年度内にも年間生産台数150万台達成 設計・開発拠点の設置で新しい段階へ4

なぜ一大生産拠点になったのか

 九州が、世界的な自動車の生産拠点になった要因は、人材供給をはじめとするヒト、工業団地をはじめ道路、港湾などのインフラ、自動車生産の基本となるモノづくり文化、そして進出を検討していた企業自身による経営判断にもとづくものと見ることができる。
 
 自動車産業は、多くの人手を必要とする労働集約型の業態である。トヨタの本拠地の愛知県などでは、求人数が求職者数を大きく上回る、いわゆる「人手不足」の状況にある。これに対し北部九州は、労働力に余裕があり、特に若い働き手を確保しやすい地域。このことが、自動車メーカーが新たな進出地を選ぶ上で大きな要因になった。
 
 福岡県を例にとると、32の大学があり、そのうち理工系学部を有する大学は13にのぼり、理工系の国立大学生数は東京に次いで全国2位だ。また、福岡県内には3つの国立工業専門学校、23の工業系高校があり、毎年多くの若い人材を供給することが可能だ。
 
 東海地方を本拠地とするトヨタ自動車の場合、全従業員の2割から3割が九州出身者で占められているといわれる。事実、トヨタが91年秋、トヨタ九州への転籍希望者を募ったところ、2200人の九州出身者が応じた。この中から選ばれた約700人が赴任、宮田工場の生産を立ち上げていく上で大きな戦力になったという。
 
 歴史的にみても北部九州には鉄鋼に始まるモノづくり文化があったことも大きい。日産自動車のルーツも九州だった。日産コンツェルンを築いた鮎川義介が北九州に創業した戸畑鋳物(現日立金属)が1933年、ダット自動車を吸収、その後、日本産業との共同出資で自動車製造という会社を設立、翌年に日産自動車と改称した。いわば日産の北部九州進出は「里帰り」ともいえるだろう。
 
 もともと4大工業地帯のひとつだった北九州には独自の技術をもとに業界のトップシェアを持つ企業も多い。自動車産業でも多数採用されている産業用ロボットの大手メーカーである安川電機、住宅設備機器のT0T0などが本社工場を構えており、このような大手メーカーとの取引関係を通じて、独自の技術を培ってきた中小企業が数多く存在することの意味も大きい。

2008年09月04日

08年度内にも年間生産台数150万台達成 設計・開発拠点の設置で新しい段階へ3

第3次自動車ブームまでの経緯

 いま自動車工場および関連工場の進出・増設ラッシュに沸く九州は、1976年の日産の九州進出による第1次自動車産業ブーム、1992年のトヨタ九州の宮田工場操業による第2次自動車産業ブームにつづく、第3次自動車産業ブームの真っただ中だといっていいだろう。
 
 第3次自動車産業の発端となったのは2004年11月、ダイハツ工業グループのダイハツ九州(旧ダイハツ車体)が群馬県前橋市から福岡県に隣接する大分県中津市への全面移転だった。当初12万台の生産能力で立ち上げ、その後矢継ぎ早に増強して、2006年23万台を生産した。昨年11月には第2工場が稼働して年産46万台体制になった。
 
 一方、2005年9月にはトヨタ九州の第2工場が完成、トヨタの最高級ブランド車「レクサス」の生産を始めた。同年12月には、トヨタグループとしては愛知県外では国内初となるエンジン工場を苅田町に完成、宮田工場向けのエンジンの生産が始まった。やがてトヨタ九州での好調な車両生産を受けて、エンジン工場の生産能力を44万基と倍増させた。
 
 一方、日産グループも日産車体が、日産九州工場内に新工場を建設、2009年初旬には操業する。これで日産グループの九州における生産能力は65万台となり、日産グループの国内における生産能力の約4割を占める一大拠点となった。
 
 メーカー3社の完成車全体の約7割が輸出向けで、トヨタ九州は博多港から約9割、日産九州は苅田港から約8割、ダイハツ九州は2割強を輸出している。米国市場ではトヨタ九州のハイブリット車、日産九州の新型エクストレイル、ムラーノなどが好調だ。

2008年09月03日

08年度内にも年間生産台数150万台達成 設計・開発拠点の設置で新しい段階へ2

北部九州に立地する自動車メーカーの概要

2008年09月02日

08年度内にも年間生産台数150万台達成 設計・開発拠点の設置で新しい段階へ1

2020年には7兆円産業へ

 北部九州地域には、日産自動車九州工場(福岡県苅田町)、トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)、ダイハツ九州(大分県中津市)の自動車メーカー工場が立地している。各メーカーは21世紀に入ってから生産を着実に伸ばし、自動車産業は今や九州を代表するリーディング産業になった。
 
 福岡県は北部九州を関東、東海地域に次ぐ自動車産業の一大拠点とするために、2003年2月、麻生知事を会長に官民一体となった「北部九州自動車100万台生産拠点推進会議」を設置、年産100万台の実現に向けた積極的取り組みを行ってきたが、3年後の2006年に第1目標の年産100万台を突破した。そのため推進組織の名称を「北部九州自動車150万台生産拠点推進会議」(会員数470団体・企業)に改め、「生産台数150万台」「地元調達率70%」「アジアの最先端拠点」「次世代のクルマ開発拠点」の4つの目標を掲げ、目標年次を2009年度に設定した。
 
 現在の完成車の年間生産台数は、日産車53万台、トヨタ車43万台、ダイハツ46万台だが、12万台体制の日産車体九州(苅田町)が2009年初旬に操業を開始すれば、目標年次を1年前倒しして2008年度中に150万台を突破することが確実になってきた。次なる目標は現在50%しかない部品の調達率を70%まで高めることだ。
 
 経済産業省の工業統計表(2005年)によると、九州地域の自動車関連産業出荷額は約2・7兆円と九州全体の製造業工業出荷額約20兆円の約14%を占めている。九州経済産業局は、中国をはじめとしたBRICsなど海外の需給動向を踏まえて、2020年の九州地域の自動車関連産業の規模を6・4~7・6兆円と試算している。

2008年09月01日

九州全域が一丸となって取り組む「カーアイランド」づくり7

北部九州自動車生産の推移

2008年08月29日

九州全域が一丸となって取り組む「カーアイランド」づくり6

高まる地元中小企業の自動車関連への参入気運

 ―これからは部品の地域調達率のアップと地元中小企業の技術力の向上が課題になります。
 
 谷 経済産業省のサポーティングインダストリー法(中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律)による戦略的基盤技術高度化支援事業の中小企業の認定件数は九州全体で現在27件ですが、そのうち17件が自動車関連です。しかも今年新規に認定された5件のうち4件が自動車関連でした。このように自動車部品の生産性向上、低コスト化、環境配慮に対応した技術開発の意識が九州でも確実に高まってきています。
 
 ―そのような技術力強化に熱意ある中小企業は、北部九州に集中しているのですか。
 
 谷 そんなことはありません。例えば宮崎県では現在、3社5件が認定を受けていますが、5件すべてが自動車関連です。本当の意味で九州を「カーアイランド」にするためには、北部九州だけでなく九州全体で一丸となって取り組まなければなりません。関東や東海での部品の供給は陸送の場合、3時間圏が目安とされています。そのため九州知事会では九州7県で「九州自動車産業振興連携会議」を設置していますし、経産局でも今年度から南部九州での中小地場企業向けの参入事例紹介セミナーの開催を計画しています。また、南部九州の大学を活用した産学連携による人材育成の取組を開始します。いま「オール九州」で自動車産業参入の気運は高まっています。

2008年08月28日

九州全域が一丸となって取り組む「カーアイランド」づくり5

次世代交通システム「ITS実証地区」を誘致

 ―自動車関連産業への九州経済産業局としての取り組みは。
 
 谷 「人財力の向上」「次世代技術力の向上」「域内調達力の向上」などの課題を掲げて、これまで製造中核人材育成事業、中小企業大学校による研修などを活用して高度人材・専門人材を育成してきました。また現在の域内調達率50%を70%に引き上げるために、様々な情報提供や支援事業をしてきました。今年度からは新しく次世代の自動車社会を切り拓くITS(高度道路交通システム)分野の技術開発などに取り組んでいくこととしています。
 
 ―ITSとは。
 
 谷 広く一般に普及しているという点では今のところETC(自動料金収受システム)くらいしか実用化されていませんが、もともとITSとは車と道路をセンサーで結んだり無人自動車を走らせたりして、交通渋滞の緩和や、事故が起きないシステムづくりのことで、民間ベースでもかなり研究開発が進んでいます。将来的には60兆円産業ともいわれ、最近は標準化のための国際会議も開かれています。このITSを実際に道路でテストするための「ITS実証地区」を九州地域に誘致する準備を進めています。このように自動車は社会全体とのかかわりが深く、産業としての広がりがどんどん進展していきます。
 
 ―かつて九州は半導体産業の進出で「シリコンアイランド」と呼ばれましたが、一方では「頭脳なきシリコンアイランド」とも言われました。
 
 谷 単なる組立工場であっては経済波及効果は限定的ですが、最近は動きが変わってきました。今年4月には日産車体の100%子会社でソフト開発のエヌシーエスが福岡市に九州オフィスを開設しました。日産としては神奈川県外では初の開発拠点です。トヨタ自動車九州は2010年に設計・開発拠点を宮田工場の敷地内に新設すると発表しました。またダイハツ九州も2010年4月に九州大学伊都キャンパスの隣接地に設計・開発を担う「開発センター」(仮称)を新設予定です。
 このように九州に自動車づくりの頭脳拠点の集積が加速化され、開発と量産を一体に進める拠点として発展していくことが期待されます。また九州には半導体産業の実績があり、自動車と半導体、ソフトウェアが融合したカーエレクトロニクス産業分野の発展も期待できます。

2008年08月27日

九州全域が一丸となって取り組む「カーアイランド」づくり4

自動車はあらゆる分野の可能性を秘めた産業

 ―2008年度中に北部九州の自動車メーカー3社の年間生産台数が150万台を達成することが確定的です。これだけ順調に伸びてきた原因はなんでしょうか。
 
 谷 ひとつは「北部九州自動車150万台生産拠点プロジェクト」に代表されるように地元の熱意です。自動車関連産業を地元の経済を引っ張るリーディングインダストリーに育てようという積極的な施策の効果が大きい。それと、これまで関東、東海地域に集中していた生産拠点を分散化して新しい生産拠点づくりを進める自動車メーカーの企業戦略に応えるだけのものが、地元にあったということです。つまり北部九州には自動車に関連するものづくりの歴史や技術の集積や人材が豊富にあった。
 
 ―自動車関連産業は九州のリーディングインダストリーになりうるでしょうか。
 
 谷 2005年の九州地域の自動車関連産業出荷額は約2・7兆円と全体の製造業工業出荷額約20兆円の約14%を占めています。順調にいけば2020年の九州の自動車関連産業の出荷額は6・4兆円から7・6兆円との試算もあります。自動車産業はあらゆる分野に新しいビジネスチャンスを生みます。例えばカーナビなどはあっという間に普及して、今やレンタカーにも付いています。これから環境、安全・安心などのニーズに対応していかねばならないので、さらに新しい技術や新商品が開発されてくるでしょう。

2008年08月26日

九州全域が一丸となって取り組む「カーアイランド」づくり3

インタビュー 九州経済産業局長 谷 重男氏

 北部九州の自動車メーカー3社の年間生産台数が、2008年度内にも目標としていた150万台を達成することが確実になった。自動車産業は日産、トヨタ、ダイハツの3社だけでなく、1次部品メーカー、2次・3次メーカー、下請け中小企業は現在808社に及び、さらにその裾野は広がっていくことは必至だ。九州経済産業局長の谷重男氏に九州の自動車産業の現状と展望を聞いた。

九州経済産業局長 谷 重男 氏谷 重男●たに・しげお
1955年生まれ。富山県出身。78年東京大学工学部卒業後、同年通産省(現経済産業省)入省。エネルギー、モノづくり、産業政策と幅広く担当する。2005年8 月より経済産業省大臣官房審議官、06年7 月より内閣府大臣官房審議官を歴任。07年7 月より九州経済産業局長に就任し、現在に至る。