<相続による事業継承と法的問題点>
自ら会社を創業し、永年経営を行ってきた中小企業、非公開企業の経営者にとって、事業継承・後継者問題は、大きな関心事であると思われます。この問題に関しては、自らの子どもを後継者をして事業を継承させるというケースが多いと考えられますが、この場合、株式の相続に際して株式が分散してしまえば、事業継承が円滑に行われなくなるおそれがあります。
そこで、以下、相続における株式移転について、現在どのような法規制がなされているか、また新会社法においてどのような改正がなされているかを説明いたします。
<現行商法における相続制限について>
(1) 株式会社における株主はその個性が問題とならず、株式は原則として譲渡が自由であるとされています。
もっとも、同族会社その他、株主の個性が問題になり、したがって好ましくない者が株式を譲り受けて株主になっては困る会社も存在するため、定款をもって株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨を定めることができるとされています(商法204条1項但書)。
会社の閉鎖性を維持し、会社運営の円滑を害すること防止するという観点から、我が国の小規模株式会社の大半は、当該規定に基づき、定款に譲渡制限の定めをおいているものと思われます。
(2) では、このような譲渡制限の定めのある会社において、相続が生じた場合においても当該規定を適用し、会社運営に支障をきたすおそれのある相続人が株主となることを承認しないという扱いが可能なのでしょうか。
この点に関して、株式の「譲渡」とは、一般的に売買・贈与といった特定承継をいい、相続・合併といった一般承継は含まれないと解されます。よって、定款に譲渡制限の規定が置かれていたとしても、当該規定により、相続を制限することは認められないということになります。
<会社法のもとでの譲渡制限>
このように、現行商法では、相続に伴い株式が分散し、議決権の拡散することを防止する制度的保証はないといえます。それでは、2006年5月施行予定の会社法では、これらの問題状況を踏まえて、事業継承の円滑化のために、いかなる規定がおかれているのでしょうか。
(1)まず、会社法では、株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができると規定されています(会社法174条)。
これは株式の譲渡制限制度が、当該株式が他人に譲渡される場合には、株式会社の承認を得ることとし、株式会社にとって好ましくない者が当該株式の株主とならないようにするための制度であるところ、相続その他の一般承継により、株式会社にとって好ましくない者が株式会社の株式を取得した場合に、当該株式を株式会社に売り渡すことを請求することができることとするのが、上記の株式譲渡制限制度の趣旨に合致すると考えられるからです。
会社が、この規定に基づき、売り渡し請求をしようとするときは、その都度、株主総会の決議を要するとされていますが、売渡し請求の相手方は、この株主総会において原則として議決権を行使することができないとされており(会社法175条)、会社にとって好ましくない株主への相続を阻止できる仕組みになっていると考えられます。
(2)また、会社法では、株式譲渡制限会社における相続人からの取得が容易になるよう、以下のような手続きが整備されています(会社法162条)。
すなわち、会社法上、株式会社が特定の者から自己株式を取得する場合には、原則として、他の株主が自己を売り主に加えることの請求をすることができることとされています(会社法160条3項)が、相続により株主となった者から自己株式を取得る場合には、他の株主が買取請求をすることができないと規定されています(会社
法162条)。
当該規定により、会社は、他の株主からの買取請求のリスクを抱えることなく、会社にとって好ましからざる相続人と買い取りの交渉をすすめられることになります。
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