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「契約書の基礎」

契約書の重要性

 「中古大型機械を購入し、代金を支払ったものの、引き渡してくれない」、「従業員を試用期間終了をもって解雇しようとしているが、条件が違うといわれて争いになっている」、「美容器械を販売したが、クーリングオフを主張された」など、取引のさまざまな場面でトラブルが起きた場合、相談を受けた弁護士がまず確認するのは契約書の存在です。いうまでもなく、訴訟になった場合に、これが最も重要な証拠になるからです。契約書が存在しない場合でも、これを裏付ける請求書や見積書、覚書、ひいては営業用メモですら証拠価値をもってきますが、価値の高さでいうと契約書の証拠価値は圧倒的です。

契約書を締結する際は、権限ある者が署名(記名)押印したか、日付けが入っているか等も重要です。後日「営業職員が権限もないのに勝手に契約した」等と主張されてトラブルが発生することがないようにするためです。

以下、当事者の類型ごとに概観します。

Bto C

 企業(Business)対消費者(Consumer)の取引の場面では、既に消費者契約法が存在し(2001年4月施行)、事業者と消費者との間のすべての契約(消費者契約)に適用されます。不適切な勧誘によって誤認・困惑させて契約した場合、消費者は契約を取り消すことができます。また、消費者に一方的に不当・不利益な契約条項については無効を主張できるという強力な法規です。加えて、消費者契約法には新たに消費者団体訴訟制度が創設され、制度導入後は(2007年6月7日施行)、被害情報を受けた適格消費者団体が事業者に対し裁判内外で差し止め請求権を行使でき、その結果、不当行為の停止又は予防が命じられることになります。

こうした事態を予防するためにも、まず契約書面の記載事項が最重要になりますし、さらにはいくら契約書に明記していても、取消し・無効となることがあるため、そうした結果を防止するため、あらかじめ契約書類やこれに伴う説明書類の文言が万全なものであるようにチェックしておく必要があります。

BtoB

企業対企業の取引でも契約書面等が重要であることはいうまでもありません。もっとも、現実の取引の現場でその都度契約書を取り交わしていることは少なく、発注書・見積り書・納品書等をファクシミリでやりとりすることはよくあることです。もちろん、これらの書類が証拠書類となり、契約書に代わるものとなりますが、継続的に取引を行う場合には、最初に取引基本契約書や業務委託契約書等の書面を取り交わしておき、後日のトラブルに備えておく必要があります。

日本の一般的な取引慣行ではこれから取引を開始しようとする場面では、将来トラブルになる事態は考えないのが通常です。しかし、欧米では、取引開始時に将来のトラブルを想定し、その場合の解決策を契約条項に盛り込むことが常識といわれています。確かに、取引開始時の友好的な時点でトラブル時のことを想定することは良好なビジネス関係を悪化させかねない面もありますが、ここはリスク管理・トラブル予防の観点からも、いざというときの条項を明文化しておくことを強くお勧めします。

BtoE

企業対従業員(Employee)の場面では、企業と従業員との労働契約の書面化が極めて重要です。2008年3月1日から労働契約法が施行され、使用者は契約内容について従業員の理解を深めさせ、できるだけ書面で確認するよう規定されました(第4条)。前提として、常時10人以上の労働者を使用する場合には就業規則の作成・届け出が必要であり(労働基準法第89条)、これが労働契約の内容となってきます。就業規則の作成を免れる企業であっても、労働契約内容を明確化することは後日の労働トラブルの予防につながります。

2008年4月1日からは、いわゆるパートタイム労働法が改正され、パートタイム労働者を1人でも雇っている事業主は、雇い入れたときは速やかに、労働条件を文書等で明示すべき義務が規定されました。しかも、違反した場合には、行政指導によっても改善がみられなければ、10万円以下の過料に処せられます。

従業員数が少ない企業では労働条件を書面化していないことが多く、トラブルが頻繁に起きがちです。書面を作成することは煩雑な業務ではありますが、後日の紛争処理に費やすコストを考えると、やはり事前の書面交付が極めて重要といえるでしょう。


南谷綜合法律事務所
弁護士 南谷敦子

1971年10月27日生まれ 
1990年3月福岡県立修猷館高校卒業
1994年3月九州大学法学部卒業
1999年4月福岡県弁護士会に弁護士登録とともに
福岡国際法律事務所に勤務
2007年5月南谷綜合法律事務所にパートナーとして参加
現在に至る

 
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